[書評]中国を理解するための新しい見方「橘玲の中国私論」(おすすめ異文化本読書感想)

橘玲氏は「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計入門」をはじめ、様々な著作を欠かさず読んでおり、常にウォッチしている作家です。今回の著作もさらに中国に関するものとして、中国好きの自分としては、作者買いで手にとった一冊です。。



橘玲の中国私論—世界投資見聞録
作者:橘玲
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2015/3/6
中国、投資


最初にページに中国の鬼城(ゴーストタウン)についてカラフルな写真つきでの解説があります。中国といえば、政府による過剰投資により、多数のマンションなどが開発され、多くの住まれていない建物ができています。それが鬼城です。そんな非常に目につく鬼城の解説によりはじまる本書ですが、それは序章に過ぎず、中国人に対して、独自の視点で切り込んだ一冊です。内容は実体験をベースにした解説であるため、また、連載記事やメルマガをまとめたものであるため、比較的ライトにさくさく読めます。その分、全体のまとまりは少し弱いですが、中国に対する新たな視点を得られるという点では特筆するべきものがあります。

作者は、中国について、「人が多すぎる」と「グワンシ(関係)」の2つのキーワードからいろいろなことを説明可能であると述べている。その根底には、ひとつの場所に生まれて、死んでいく日本社会と、いろいろな場所での移動が前提となっている中国社会との違いがもとに、日中の様々な違いを生んでいるという考え方があります。

中国みたいな社会では、その場所や企業よりも、人的ネットワークが優先される社会を産んでいきます。

中国は「関係(グワンシ)の社会」だといわれる。グワンシは幇を結んだ相手との密接な人間関係のことで、これが中国人の生き方を強く規定している。

この幇も中国を理解するためには重要なキーワードです。

幇は「自己人(ズージーレン)」ともいい、中国人にとってもっとも根源的な人間関係だ。いったん幇を結ぶと家族同様に(ときには家族以上に)絶対的な信頼を置く。

人口が多すぎることや、グワンシによる人間関係はある程度中国についての知識がある人ならば、知っていることですが、それを中国の様々な現象に結びつけたところがこの本のおもしろいところだと思います。

日本人との違いは下記のように述べています。

日本の場合、安心は組織(共同体)によって提供されるから、村八分にされると生きていけない。日本人の社会資本は会社に依存しており、不祥事などで会社をクビになれば誰も相手にしてくれなくなる。

それに対して中国では、安心は自己人の「グワンシ」によってもたらされる。

これについて、おもしろいエピソードで語っています。それは、幹部からいきなり同業他社からオファーがあり辞めるというと日本では怒りだすが、中国ではおめでとうというとのことです。グワンシはそのまま続くので、いつか、新しいビジネスが生まれる可能性があるということで、中国ではおめでとうと言います。いかに日本人的な感覚(幹部が辞めるのはけしからん)というものは、日本的な会社を中心とするものの見方を示しているに過ぎないということを実感しました。

本書で感じたこと

中国の理解するキーワードである「人が多すぎる」「グアンシ(関係)」をキーワードに、中国がどのような社会になっていくか考えてみたいです。中国でイノベーションが起こっていくのか、それともイノベーションも鬼城のようになっていくのか。グアンシはどのようにイノベーションに寄与していくのか。論点はいろいろありそうである。



橘玲の中国私論—世界投資見聞録
作者:橘玲
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2015/3/6
中国、投資

<目次>
●はじめに 中国を旅するということ
●PART1 中国人という体験
1 ひとが多すぎる社会
2 幇とグワンシ
3 中国共産党という秘密結社
●PART2 現代の錬金術
4 経済成長を生んだゴールドラッシュ
5 鬼城と裏マネー
6 腐敗する「腐敗に厳しい社会」
●PART3 反日と戦争責任
7 中国のナショナリズム
8 謝罪と許し
9 日本と中国の「歴史問題」
●PART4 民主化したいけどできない中国
10 理想と愚民主義
11 北京コンセンサス
12 中国はどこに向かうのか



[書評]データをもとに見る本当の戦後経済「戦後経済史は嘘ばかり」(おすすえ歴史分析本読書感想)

本屋でたまたま目にして手にとって興味をもって、購入。経済データをしっかり分析することで、これまでに世の中で言われている経済に関する迷信を切って捨てます。


戦後経済史は嘘ばかり (PHP新書)
作者:髙橋 洋一
出版社:PHP研究所
発売日:2016/1/16
経済、歴史

歯に衣着せぬ語り口の数学科出身の元大蔵省、小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンの作品です。

いきなり我々が通説として知っている下記についてばっさりと切ります。

みなさんは、次のようなことを信じていないでしょうか。
(1)高度成長は通産省の指導のおかげ
(2)1ドル=360円時代は為替に介入していない
(3)狂乱物価の原因は石油ショックだった
(4)「プラザ合意」以降、アメリカの圧力で政府が円高誘導するようになった
(5)バブル期はものすごいインフレ状態だった
これらはいずれも間違いです。

これらの中身については、詳しくは、本書に譲りますが、そのための分析としては、過去のデータにもとに、原理原則をもって、恣意性をなくして、状況を分析することの大切さを述べています。そのためには、モデルとなる理論、すなわち「こうなるはずだ」というものを作り、それを検証し、分析し、「はずだ」があたっているかをみて、あたってない場合は、また、分析して理論を修正する。その繰り返しが必要となります。いわゆる理系による思考の積み重ねこそが正しく状況を理解するための道具立てとなるということです。

不良債権問題についても、不良債権が早く処理できなかったことが問題というよりも、誤った金融政策により、長期間にわたって、GDPが伸ばせなかったことが問題の本質だと述べています。不良債権問題は銀行が不良債権を処理できなかったと思い込んでいた私としては、正しく世の中の流れを分析していく必要があることを気付かされました。

バブルに関しては、下記のようなコメントをしています。

「バブルを起こさない」ことばかり考えて、経済を減速させるような手を打ち続けるより、「バブルが起きたら正しい処理すればよい」と考えて、恐れずに適切なマクロ経済政策を展開していくべきなのです。

闇雲にバブルをおそれ、それを抑えこもうとするよりも、バブルは起こりうることを前提に、いかに舵取りをして、大きな被害を出さずに乗り切っていくか、そんなことを考えていくことが必要です。この本は日本経済についてのみ述べていますが、中国バブルの政府の舵取りも同様な発想が必要かもしれません。

本書の中で印象的だったのは、下記の内容です。

「常勝小泉・竹中」のイメージがあるかもしれませんが、最初は敗戦続きでした。

小泉・竹中ラインは強い力をもって進めてきたと思っていましたが、初期はそうではなかったとのことです。ただ、竹中氏のすごいところは、こてんぱんに負けた理由を分析して、どうやったらうまくいくかを考え、変え続けたことであります。大きな成功のためには、初期の失敗をよく分析し、対策を練り続けることが必要であると再認識しました。

本書で感じたこと

バブルを例にあげていますが、問題は起こさないようにしても起こってしまうものです。起こる前提で適切な展開をすることを考えることも大事なことだと思います。そのためにも、過去のデータをもとに、状況を適切に把握し、仮説検証をもって、日々検討していくことが大事であると感じました。


 

戦後経済史は嘘ばかり (PHP新書)
作者:髙橋 洋一
出版社:PHP研究所
発売日:2016/1/16
経済、歴史

プロローグ──経済の歩みを正しく知らねば、未来は見通せない
第1章 「奇跡の成長」の出発点に見るウソの数々
第2章 高度経済成長はなぜ実現したのか?
第3章 奇跡の終焉と「狂乱物価」の正体
第4章 プラザ合意は、日本を貶める罠だったのか?
第5章 「バブル経済」を引き起こした主犯は誰だ?
第6章 不純な「日銀法改正」と、痛恨の「失われた二十年」
終 章 TPPも雇用法制も、世間でいわれていることはウソだらけ


[書評]新しい本の読み方「遅読家のための読書術」(読み方本読書感想)

遅読家のための読書術

本の読み方が本当にこれでいいのかな。ちょっと自信がなくなってきたなと思った時に手をとったのがこの本です。


遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣
作者:印南 敦史
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2016/2/26
ビジネス、読書法

年に700冊超を読む人気書評家の読書術が書かれた本です。ニュースサイトに月60本近くの書評をするにもかかわらず、速読ではなく、遅読家という意表をついたタイトルである。大量の情報を処理していかない今の時代に新しい本の読み方を提案しています。

読書の本当の価値は、書かれていることの「100%を写しとる」ことではなく、価値を感じられるような「1%に出会う」ことにあります。

これまで多数の本を読んできた自分ですが、この言葉にはっとしました。それは、これまで読んできた本のどのくらいを覚えており、そして、人生や仕事、プライベートに役に立っているかというと、正直自信がない気持ちが持ち上がりました。知り合いに最近読んだ本について紹介しようと思っても、なかなかポイントが思い出せないことがあります。これは、本を全部取り込もうとしていたからだと気づきました。本当は、100個のうちの1個でも自分の血となり肉となるものを持つことが本を読む価値だということです。

そのためにも、本書では、自分の気に入った本を棚卸しすることを習慣化していくことをすすめています。

棚卸しをするストック(引用)を作っていく方法として、作者は下記のような方法をとっています。

僕は読みながら気になった箇所をどんどん書き写していくようにしています。

そして、書きだした箇所を本を読んだ後に読み返す事を進めています。その時に下記の3つのを意識して読んでいくことを勧めています。

・自分はどんな本に刺激を受けやすいのか?
・自分はどのような考え方を好むのか?
・自分はこれからどんな本を読みたいのか?

また、本を読めない理由として下記をあげています。

本を気軽に開き、気軽によみはじめられないのは、「その本を読むことによってなにを得たいか」がはっきり決まっていないからです。

私は本を探すときに、自分の興味あるキーワードで調べて本屋で確認、本屋の棚のおすすめをチェック、書評サイトなど、様々な方法をとります。そして、購入した時には、その本を読もうと思った動機があったはずです。そのはずが、すぐに読まず積み本となり、後から読むとそれが抜き落ちてしまう。今一度、本を読む前にその目的を振り返って、何を得たいかを明確化し、それを得る読み方が必要と感じました。

本書で感じたこと

多くのことはすぐに忘れてしまうのが現実です。名著を何回も繰り返す読むのも1つの方法ですが、多読の中でも、読んだ本の中で1つでも自分に将来に役立つものを得る。そんな発想で読書を続けていきたいと思います。

遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣
作者:印南 敦史
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2016/2/26
ビジネス、読書法

<目次>
はじめに なぜ「1ページ5分」の遅読家が年700本の書評家になれたのか?
第1章 なぜ読むのが遅いのか? ─ フロー・リーディングの考え方
第2章 なぜ読む時間がないのか? ─ 月20冊の読書習慣をつくる方法
第3章 なぜ読んでも忘れるのか? ─ 読書体験をストックする極意
第4章 流し読みにもルールがある ─ 要点を逃さない「サーチ読書法」
第5章 本とどう出会い、どう別れるか? ─ 700冊の選書・管理術
終章 多読家になって見えてきたこと


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