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[本]味覚ってこんなに奥が深いんだ!「「味覚力」を鍛えれば病気にならない」

味覚ってこんな奥が深くて、我々の体の状態、健康、病気と密接に関係しているだ。

味や味覚というものの科学的な側面、医学的な側面について、一般の新書として軽く読んでいきたい人におすすめの本です。

「味覚力」を鍛えれば病気にならない――味博士トレーニングメソッド

この本のおもしろさは、味覚のメカニズムやそれがどうして病気とつながっているかがわかるだけではなく、味覚を鍛えることで、ダイエットなどにもつなげていける方法が書かれているところです。

味覚と病気の関連ですが、非常に密接に関係しています。糖尿病になるリスクが高い人は、甘味を感じにくくなっているそうです。また、高血圧になりそうな人は塩味を感じにくくなっているとのことです。このように味覚は病気と関係しています。

本文中には下記のような記載があります。これは、我々も心当たりがあることのように思います。よって、逆に食欲をおさえるための味覚の組み合わせというものも考えられます。

異なる種類の味刺激があると、人間は食欲がどんどん湧いてきてしまう。

 

著者はAISSYという味覚センサーや味覚に関する商品開発やマーケティングの支援などを行っている会社の創業者で、味博士とも呼ばれています。著作には、「味博士のぜったい太らない食べ方」や「日本人の味覚は世界一」もあります。

味覚の奥の深さ、そして病気との関連とそのコントロール方法。そんなことが知りたい方はぜひこの本を読んでみてください。


[書評]健康サービスの未来について国会議員が考える「未病革命2030」(おすすめ健康政策本読書感想、片山さつき)

未病革命2030

過去にも自治体単位での健康づくりの取り組みで、歩数計を配り計測した歩数によって何らかのインセンティブを出した例がありますが、なんと歩数計を犬につけ歩かせた例が本当にあったそうです。この点からは、健康づくりという枠組みを超えた、国民生活全体の利便性や危機管理と一体となったインセンティブが有効なのではない考えます。

片山さつきさんは、元大蔵省(財務省9の完了で、その後、2005年小泉内閣の時に衆議院で初当選し、政治家となっています。現在は、参議院議員です。

そんな片山さつきさんが、安倍政権が出す「1億総活躍社会」の実現に向けて、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の健康分野での利用をあげています。その名もIoHH(Internet of Human Heath)。

この本では、IoHHの必要性を訴える片山さつきさんと次の7人の国立研究所、行政官、起業家、県知事などとの対談形式で、2030年に向けた未病革命について対談しています。国や行政の大きな流れを知るのには、ちょうどよい本だと思います。

国立長寿医療研究センター理事長 鳥羽研二氏
内閣総理大臣補佐官 和泉洋人氏
楽天会長兼社長 三木谷浩史氏
ジェイアイエヌ社長 田中仁氏
神奈川県知事 黒岩祐治氏
カナミックネットワーク会長 山本稔氏
医療法人社団悠翔会理事長・診療部長 佐々木淳氏

認知症や寝たきり予防に必要な人は気づいていない

健康長寿に関する一線級の国立の研究センターである国立長寿医療研究センター理事長の鳥羽研二先生は、認知症や女性の低栄養について、次のように述べています。

(認知症に関する話題の続き)

鳥羽:予防あるいは発症を遅らせるための取り組みは、40歳くらいからやった方がいいとは思うんですが、その年代の人たちが何のきっかけもなく物忘れ予防を自分の生活の中に取り入れることは、なかなか案が得られません。ですから、片山さんがおっしゃるように予兆というか、こういうことが起きたときにはそろそろ気を付けていった方がいいという警告のシグナルを見つけて、世の中に知らしめていくのは大切ではないかと思います。

(中略)

鳥羽:日本と韓国は、20代の女性の筋肉量がものすごく少ないんです。世界的な注目を浴びていて、この人たちは寝たきりになるんじゃないかと言われているほどです。骨もぼろぼろになるんじゃないかということで、今大問題になっていて、日本の若い10代の人の栄養とか筋肉量をしっかり調べて警鐘を鳴らしましょうというようなことをはじめたところなんです。

予防医療の難しいところは、その対策が本当に必要なのは、病気の発症のかなり前の段階であり、その段階(年代)では、そういった病気がイメージできないことにあります。

人間心理として、まだまだ自分は大丈夫という気持ちがあります。60歳を超えても、まだまだ自分はボケていないぞという自負心のようなものがあります。それに対して、鳥羽研二先生はそれよりはるか前から、その予兆を気づかせて、認知症予防の行動をとった方がよいと言っています。そのためのアラートのようなサービスが必要だと言っています。

さらに日本の若い女性の低栄養による筋肉量減少の問題は深刻です。女性は痩せている方がよいという若い女性に広がる社会通念みたいなものがあります。それは芸能人とかモデルとかがそうであることに起因します。よって、寝たきり予防とは間逆なことを若い女性がしますが、その何十年も後にくるリスクについて、知っている若い女性はほとんど皆無なのではないでしょうか。仮に知ったとしても、長期的に正しい行動をとらないかもしれません。

こういった長期的な健康リスクの領域は、うまく行政などが企業と組んでメディアなどを使って、啓発のヘルスケアプロモーションを進めていくしか解決策がないかもしれません。単一の組織でなんとかできるレベルではないです。国民の皆様の既存概念を変えていくということは。

検査サービスの価値は病気発症予測と継続的な推移(楽天三木谷社長)

楽天会長兼社長である三木谷浩史さんは、片山さんのヘルスケアのビッグデータとそれ関する検査サービスについて、次のように答えています。

片山:おそらく、データを集めてサービスを提供するとさらに違った要素のデータが蓄積されるというかたちで、結果的にはヘルスケアに関するビッグデータを持つことになると思うのですが、検査サービスなどのさらに先にあるものとして、それを使ってどういうことができると三木谷さんは思われますか。
三木谷:やっぱり一番可能性が高いのは、未病と言っていいのかわかりませんが、病気になる前に使うことでしょうね。基本的には二つあって、一つは長期的にどういう病気になる可能性があるかということの確率論。もう一つは、継続的な推移を見ることによる警鐘としての役割ですよね。僕は三ヶ月に一回血液検査をしているのですが、そうすると変化がわかります。でも仏の人はあんかなか難しいじゃないですか。それがもっと簡単に、たぶん自分で毎日ぴっとやればできるようになっちゃうと思うので。

三木谷浩史さんの視点から、ヘルスケアのビッグデータは長期的にどういう病気に可能性があるのかと、短中期的に自分の検査値がどんどん悪くなっていくることを見ることで、自分が病気に近づいているというアラートの効果について述べています。

前者は(その精度があるかの議論は別として)遺伝子検査のようなかなり先についての予測を想定しているようです。生活習慣からなんの病気が想定されるかというのもありきたりですがあるかもしれません。後者は、検体測定室などの簡単に検査できる仕組みを想定しているのではないでしょうか。

そう考えると、国の動きがそのまま三木谷浩史さんの頭に入っているのではないかと思います。ただし、この対談が三木谷浩史さんの本音で語っているということが前提ですが。

メガネ型ウェアラブル機器で睡眠時無呼吸症候群検査を目指すJINS

眼鏡の概念を変えたジェイアイエヌの社長田中仁さんが、JINSのウェアラブル機器に関して、次のようにコメントをしています。

田中:例えば、睡眠時無呼吸症候群(SAS)についても研究しています。
片山:寝ているときにも眼鏡をかけるということなんですか。
田中:いいえ、そうではありません。昼間の眠気を測ることでわかりそうです。睡眠時無呼吸症候群は、検査そのものは一万円から数万円程度でできるのですが、どうしても一泊する必要があるうえに、差額ベッド代を請求されたりすると結構な費用になります。そういう事情もあって900万人いると言われているのに対し、30万人しか顕在化していないのです。
(中略)
田中:おっしゃるとおりです。今までのウェアラブルは、ほとんどログを取るだけで止まっていました。しかし我々はログを取るだけではなく、それを「ベター・ミー」のソリューションとして、どう解決策を提供するかということろまでエネルギーを割いています。

睡眠時無呼吸症候群は、メタボとか肥満が原因の1つであり、生活習慣病です。よって、メタボ系の人は結構なる可能性がある、比較的ありふれた症候群です。

昼間眠気があってはいけない職業、例えば、タクシー運転手とか、トラック運転手とか、そういう人に対して、睡眠時無呼吸症候群を顕在化させることに意味があります。

さらに、今のウェアラブルに対して、課題を田中仁さんは投げかけています。今のウェアラブルはログを取る機能がほとんどで、その課題をどう解決するという点が貧弱です。活動量計も活動量は細かくわかりますが、それをどう改善するかはより活動するしかないです。もちろん、生活のTIPSみたいな情報はありますが、目新しさに書きます。

JINSの田中仁さんは、それに対して、解決策にかなりエネルギーを割いているということで、どのようなソリューション(解決策)が出てくるのか楽しみです。

本書で感じたこと

未病、健康サービスに取り組むという気持ちは全ての対談者で共通していますが、その行く道の方向性は三者三様のように感じました。もちろん、アカデミア、企業、行政でまったく同じ方向性になるのは難しいと思いますが、それにしてもバラバラです。同じものを(立場による)違う視点でものを言っている感じがしません。

今後、日本の総力をもって、未病革命を進めていくには、もっと全員の力を似たような方向にまとめていくようなフレームワークが必要なんではないでしょうか。それを作り、あとはそれぞれの立場(アカデミア、企業、行政、大学など)で出来ることをがんばっていくということが必要のように思います。


未病革命2030

著者:片山 さつき
出版社:日経BP社
発売日:2015/12/8
未病、予防医療、健康サービス

<目次>
総論 なぜ、今IoHHなのか
第1章 認知症/フレイル―対談者 鳥羽研二氏(国立長寿医療研究センター理事長)認知症の発症を五年遅らせられれば、患者数は半分以下になる
第2章 健康・医療戦略―対談者 和泉洋人氏(内閣総理大臣補佐官)健康・医療は今、日本で最大に関心を持つべき分野
第3章 データ活用―対談者 三木谷浩史氏(楽天会長兼社長)多様なデータを統合して分析することで見えてくるものがある
第4章 ウエアラブル・デバイス―対談者 田中仁氏(ジェイアイエヌ社長)「自分を見る」機能で眼鏡の概念を変える
第5章 未病/産業創出―対談者 黒岩祐治氏(神奈川県知事)「未病」への取り組みが社会・経済を活性化する
第6章 在宅介護/情報共有―対談者 山本稔氏(カナミックネットワーク会長)多職種連携がデータ活用の新たな可能性を拓く
第7章 在宅医療/医療のアルゴリズム化―対談者 佐々木淳氏(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長)治療がQOLの改善につながるとは限らない
<著者紹介>
片山さつき
参議院議員。1959年埼玉県生まれ。82年東京大学法学部卒業後、大蔵省(現・財務省)入省。入省後23年間で、84~85年フランス国立行政学院(ENA)留学。89年以降、広島国税局海田税務署長(西日本女性初)、国際金融局課長補佐(女性初のG7・サミット政府代表団員)、横浜税関総務部長、銀行局企画官、主計局主計官など女性初のポストを歴任。2005年第44回衆議院議員総選挙で初当選(静岡7区)、2010年参議院(全国比例区)に転じ、自民党トップ当選(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



[書評]健康格差って周りの環境が広げている「命の格差は止められるか」(健康長寿本読書感想)

命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業(小学館101新書)

「なぜ、ある社会の人々は健康で、ある社会の人々は不健康なのか、その答えを探してほしい。だから君には”社会と健康”という授業を任せる。

 当時から、アメリカは先進国の中で寿命が最低レベルでした。ですから、国民全体を健康にするための要因を見つけることは国をあげての急務でした。
 そんなアメリカがいつも見ていた国、それが日本でした。それもそのはず、明治・大正時代の日本人の寿命は40歳台で、戦後も先進国中最低だった順位を、約30年で世界のトップにしたのです。短い間にこれだけ寿命を急激に伸ばした国は、他にあまりありません。

日本は誇るべき長寿国だというのは、日本人もみんな思っていることです。アメリカのハーバード大学教授が日本の健康や健康格差について語っている本です。カワチイチロー先生は小学生まで日本におり、その後はニュージーランドで生活し、アメリカに写って活躍された方です。

アメリカでカワチイチロー先生がみたものは、同じ国でも人種や職業などによって、早く死ぬ人もいれば、長く生きる人もいるという格差の現実です。それをずっと研究してきました。

日本の長寿の原因は失われてつつある

カワチイチロー先生は、短期間で長寿大国になった日本を研究してきました。しかしながら、最近の日本に次のような危機感をつのらせています。

今、私は日本の誇るべき長寿に危機感を持っています。2011年の平均寿命調査で、日本は男女ともに順位を下げ、女性は26年間保っていた世界一の座を明け渡しました。非正規労働者の増加などによる格差の広がりとともに、人と人との絆が薄くなり、日本の持つ素晴らしい側面が失われつつあると感じています。生活習慣病など、病気の改善を個人の努力だけに追い求めてしまう社会は、格差をよりおおきくしてしまうのです。このような変化は、日本人の健康に確実に影響を及ぼしています。

かつては、ご近所付き合い、会社員づきあいなど、人の絆が強い時代がありました。ただ、最近はそういったものが失われつつあるのは、我々も実感するところです。

しかしながら、我々が健康でないのは、そういった社会的な周辺の環境面ではなく、不摂生な生活を直せないことに、常に注目が集まります。

人とのつながりが健康につながる理由

カワチイチロー先生は人とのつながりが健康につながる理由を下記のように説明しています。

なぜ人とのつながりが強いと健康になるでしょうか?

まず、大きく3つのメカニズムがあると言われています。

ひとつ目のメカニズムは、人とのつながりによって、知らずしらずのうちに自分の行動が決められることがあり、その結果、健康に影響するという説です。

毎週食べる野菜の量は、男女ともに結婚すると増え、離婚もしくは伴侶が死別すると減る

ふたつ目の説は、人には、「人と交わること」でため保たれる体の能力や機能があり、人と関わることで健康でいられる

3つ目は、人とのつながりから生まれる様々な支援(ソーシャル・サポート)が健康に影響を与える

このように、我々は、自らの生活習慣のパターンを自らの意志だけで決めているわけではありません。その人が置かれた環境、家族など、人とのつながりによって決められている部分も大きいのです。そして、人とつながることで、身体・精神ともに様々な影響を与え、生命力を高めていけていることを再認識しなければなりません。

健康・医療の専門家が陥るワナ

カワチイチロー先生は、健康や公衆衛生専門家、医療関係者は誤った考えを持ちがちであることを次のように述べています。

私に苦言を呈した仲間のように、パブリックヘルスや医療業界の人たちが犯しがちな間違いは、「その人の行動が変わらないのは、その人の意志が弱いから」とか、「その人が怠惰だから」と言って、個人を責めることです。しかし、この本でも紹介してきたように、体に悪い食べ物をやめられなかったり、運動できないのは、そのような環境、つまり上流の原因が大きいのです。私たちは、個人に健康的な行動をとってもらうために、このような上流の原因に目を向け、社会の仕組みを変えていく必要があるのです。

例えば、糖尿病とか、脂質異常症になるのは、その人が毎日お酒ばかり飲んでいたり、ラーメンとか、ハイカロリーのものを食べたり、そういう生活が悪いんだと、ついつい健康サービス業者でなくても、日常から他人に対して思ってしまったりします。

生活習慣が生活習慣病につながるので(名前からしてそうですが)、生活習慣が悪いのがすべてだといつの間にか、いろいろな人(政府とか、お医者さんとか)から刷り込まれてしまっています。

生活習慣が変えられない理由はなんでしょうか?個人の意志が弱いから?それだけではないのでしょうか。そういった問いに答えることによって、新しい健康サービスが生まれてくるかもしれません。

伝統的な健康に関する行動変容理論の問題点

さらに、カワチイチロー先生は、伝統的な健康に関する行動変容の理論の問題点を指摘しています。

伝統的な理論の多くは、「人々は、常に理にかなった行動をとり、計画的であるという考えに基づいています。つまり、正しいことを言えば、人々は理解してくれ、そのとおり行動してくれると考えているのです。ですから、病気のリスクや予防の大切さがわかれば、人は健康的な行動をとるようになると考えています。そのために、多くのパブリックヘルスの啓発活動において、たばこをやめることが健康にいかに重要かといったことや、がんが増えているので検診を受けるべきだということなどに焦点を絞って普及活動を行ってきました。しかし、果たしてそれは正しかったのでしょうか?

多くの伝統的な行動理論においては、人は、何かしらの行動をとる前に、「その行動をしよう」という明確な意図が形成されることを前提にします。

しかし、時に私たちの競合となる民間企業の広告戦略は、どれも直感的で感情的な「システム1」にもとづいて設計されています。

感情に強く訴えかけることで、私たちに「考える」余地をもたせず、感情的に、発作的に、自分たちの商品やサービスを選ばせようとしているのです。その結果、知らないうちに不健康なものを手にとってしまいます。

この指摘は、先生が健康に悪い商品を売る食品会社が、健康に対する意識ではなく、感情的なイメージのようなものを訴えることで、成功していることから学んでいます。我々は合理的によい商品を選んでいるということではなく、直感的に感情的に商品を選んでいます。ここらへんことは、カーネマン先生の「ファスト&スロー (上)」が詳しいです。カワチイチロー先生もカーネマン先生の研究を参考にしています。

健康サービスをお客様に届けていく時も、合理的に健康のことを考えられるという前提ではなく、感情的なものを訴求していくことも考えていく必要があります

本書で感じたこと

これまで私も人は健康に対する将来のリスクや危険性を理解さえすれば、人の行動は変わる(行動変容が起こる)と思ってきました。カワチイチロー先生がおっしゃるように、それは消費者心理として考える上では、必ずしも正しくないかもしれません。

多くの人は、健康とは多くの考えなければいけないことの1つに過ぎません。よって、深くじっくり健康について考えられるのは、一部の健康意識の高い人に限られます。そうでない人に対して、健康サービス等を訴求していくためには、深く考える前のステップで、そのサービスに対する感情的な訴求もしていく必要があることを学びました。


命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業(小学館101新書)

著者:カワチ イチロー
出版社:小学館
発売日:2013/7/31
健康格差、疫学

<目次>
第1章 日本人はなぜ長寿なのか
第2章 経済格差が不健康の源
第3章 格差是正のターニングポイント―教育と仕事と健康の関係
第4章 健康に欠かせない「人間関係」の話
第5章 社会全体の健康はこうして守る
第6章 果たして、人の行動は変わるのか


ソーシャル・キャピタルと健康

不平等が健康を損なう

健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか


[健康サービス]猫も杓子も健康増進サービス。ついに郵便局も自治体向けに。(ヘルスケアニュース)

本当にいろいろな企業が健康増進サービスに進出してきますね。ついに日本郵便も狙っているのですか。先週、日本郵便株式会社と株式会社かんぽ生命保険が健康増進サービスの実証事業を福島県伊達市で行うことをリリースしています。日本郵政グループがきましたか。

実証事業の内容は、20歳以上の500人に対して、iPad 、活動量計、体組成計を使った運動プログラムと健康情報配信、運動継続のための声掛け(?)といったサポートのようです。

今後の展開としては、かんぽによる生命保険の開発のためのデータとありますが、そのようなものはまだまだ先と思うので、やはり、目先では、日本郵便の事業展開とみるのがよいように思います。(参考まで、保険業界の過去記事はこちらこちらこちら

物流の会社がなんで健康増進サービスをやるのでしょうか。iPadも活動量計も体組成計もすべて他社製品なので、自社の売上に寄与してきません。そうなると、一つは謎の声掛けでしょうか?日本郵便はヤマト等と宅配事業で競合しています。声掛け(この記事によると、コールセンターを使うとのこと)によって、顧客接点を増やすことで、そこらへんの事業とのシナジーをはかるとか。それとも、健康情報配信からECへの流れを作るのでしょうか。

よくよく伊達市について調べると、「Smart Wellness City(SWC)」構想に参加して、「健幸ポイント」の実証実験もしているのですね(日経BPの市長のインタビュー記事)。ここから考えると、見守りサービスの延長ですかね。見守りサービスは、一人暮らしの高齢者とかが体調不良でいきなり倒れたとかないように、おうちを訪問したり、電話したり、サービスによっては、センサーをつけたりして、見守っている(監視している、というと客が遠のきますが)サービスです。

高齢者の見守りサービスに関しては、いろいろな企業がトライアルしています。知らないだけかもしれませんが、まだ、大成功したという話は聞いたことはないです。高齢者の見守りが難しいのならば、運動プログラムの声掛けサービスに横展開という考えではないでしょうか。

物流企業は定期的にいろいろな家を回っています。見守りサービスは郵便局員というリソースを活用して、サービスの幅を広げるという意図があります。ヤマトなんかも取り組んでいます。運動の声掛けもその延長を考えているのでしょうか。

個人的には、声掛けしてほしくないのですが。自分のペースでやりたい。そうなると、自治体が費用負担して、こいつ将来医療費をがっぽり使いそうな人に、運動プログラムをすすめてなんとかするパターンでしょうかね。

 

 

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[健康サービス]生命保険:健康になると保険料が安くなる保険(ヘルスケアビジネス分析)

前に保険会社について書いた記事に興味をもって生保業界の新しい流れを少し調べてみました。健康になると保険料が安くなる保険を検討している企業があるらしいです。健康サービスは生命保険をどのように変えていくのでしょうか。

アイアル少額短期保険株式会社が経産省の事業で、健康になると保険料が安くなる保険の内容を検討している日経BP記事が載っています。アイアル少額短期保険株式会社はニッチなマーケットニーズのある保険商品を開発している会社です。

その経産省の事業の結果として、バイタルデータが本人のデータかの確認の課題等のオペレーション的な問題点はがあるとのことがわかってきたとのことです。例えば、fitbitの計測値(歩数等)で保険料を下げるとしますと、自分ではなく、隣の散歩好きのおじいさんに渡して、毎日歩いてもらって保険料を下げ、いくらかをおじいさんにキックバックすることができてしまいます。本当に本人が健康になる行動をとっているかを、どう担保するかが大きな課題となっています。

それはさておき、そういう課題が仮に解決したとして(それが難しいが)どういう世界が待っているのでしょうか。

その経産省のアイアル少額短期保険株式会社の事業の調査報告書があります。13ページなのでお暇があれば、読んでみるとよいかもしれません。すでにそういった保険商品は、南アフリカやシンガポール、アメリカにはあります。経産省の事業で現地調査したらしいです。うらやましいです。自分も行きたいです。それはさておき。

海外の事例をみると、血圧が下がった、運動したから、はい保険料下げまっせということではなく、健康ポイントみたいなものがもらえるとのことです。それで特典にかえたり、キャッシュバックしたり、保険料を下げたり、ポイントを活用して、いろいろできるようです。航空券の割引とかもポイントでできるということで、マイレージみたいなものでしょうか。

それによって、実際に保険加入者の入院率が10%減るなど、効果があり、保険の解約率も下がっていて、保険会社にとっても、加入者にとってもハッピーな状況を作れています。

正直、毎日1万歩歩いたから、保険料がちょっと割り引かれたよりも、ポイントとしてどんどん健康的な行動がポイントとして増えていく様が見えていって、商品とか、他のポイントサービスに交換としてもらえるほうが個人的にうれしいかなと思います。ただし、そうすると、健保であったり、自治体であったり、様々なところがやっている健康に関するポイントサービス(例えば、よこはまウォーキングポイント)と何が違うのかとなってしまいます。わざわざこのような特殊な保険を入ってまでやるかどうかは疑問です。日本では健康ポイントが今後も氾濫していくだけのようにも思います。そのうち、統一健康ポイントとか経産省とか厚労省とか総務省あたりから出てくるのでしょうか。

そうなると、やはり、歩数や活動量等の行動ではなく、血圧が下がった、血糖値が下がったなどの簡単に日常測定できない健康指標の改善でポイントがついたり、保険料が割引になったりといった方が少しは新しさが出るかもしれません。

全般的にまだまだ新しいアイデアが生命保険✕健康サービスには求められているような気がします。海外の企業がすでにやっているならば、いずれ調査してみたいと思います。

 

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[健康サービス]ドコモとDeNAのコラボサービス スマートフォンアプリ「歩いておトク」(ヘルスケアビジネスニュース)

ドコモライフサイエンスから、下記のプレスリリースが出ている。

歩くだけでdポイントがたまる!スマートフォンアプリ「歩いておトク」の提供を開始

歩くことで、ドコモポイントであるdポイントがたまる仕組みとのことです。アプリの制作・運営は、ゲーム等に強いDeNAの子会社であるDeNAライフサイエンスが行っている。この手のアプリ開発はDeNAにとってはお手の物ですね。

実際使ったことがあるわけではないので、アプリの中身のレビューは難しいですが、ホームページに記載の内容を見る限りでは、よくあるウォーキングイベント等の仕組みとあまりかわりがないです。世界の名所をバーチャル散歩など、よくあるサービスです。あまりそういうアプリを使ったことがないですが、少し検索するだけでもそういったアプリに関する記事がでてきます。きっと類似サービスはたくさんあるように思います。

そう考えると、ここでのポイントは、歩数をドコモのポイントに変換することであるように思います。Yahooニュースの記事をみると、ドコモによる健康データの囲い込みを目指すためにキャリアフリーにすべきだとあるが、正直サービスの内容からすると、単なるドコモのサービスの販促ツールにしかみえません。囲い込むならば、このようなありきたりのサービスではなく、もっとオリジナリティのあるものを作って集客しないといけないように思います。

よって、今回の内容は安価なプロモーションツールだと考えるのが妥当ではないでしょうか。様々なツールはそのPR記事かな。

 

 


[健康サービス]ファンケルが企業向け健康増進プログラムを開始(ヘルスケアビジネスニュース)

ファンケルが2016年4月から企業の従業員向けの健康管理についての「ファンケル健康増進プログラム」を開始するとのプレスリリースができている。売上目標は3年後に80団体への導入と10億円の売上を目指しています。価格は月額約1万円。

このプログラムでは3つのステップがあるようです。

(1)健康状態とリスクを知る:健康診断結果と、生活習慣チェック、面談でチェックする。

(2)健康行動を起こす活動量計で歩数や消費カロリーを把握し、個人事にスト絵rっちやサプリメント摂取を提案します。オプションで青汁や麦芽米などの食品の提案を行う。

(3)成果を確認・継続する:ウェブサイト、フォロー面談、メールで成果を確認し、見える化する。

すでに、ファンケル従業員250人に効果検証を実施しており、BMI、血圧、脂質代謝、糖代謝などの項目について、基準値内への改善を確認しているということです。この事業自体は、神奈川県の「平成26年度未病産業の創出に係るモデル事業」の結果とのこと。すでに自治体や企業など4団体への導入が決定しているようです。

企業の従業員向け健康管理プログラムとしては、タニタの健康プログラムが有名です。タニタ食堂で有名なタニタは、自らの従業員に健康管理プログラムを実施し、そこでの医療費削減などの効果を宣伝文句として、様々な企業や自治体にアプローチしています。

今回のファンケルの試みはその路線を研究しての展開かと思います。サービス構成は、ファンケルらしく、自社製品であるサプリメントなどの拡販を意識した内容となっています。どういうサプリメントを推奨するかまで記載されていませんが、他社製品も含めてその人に最適なサプリメントを推奨するのではなく、ファンケル製品の組み合わせなんではないかと思います。

費用負担は企業側が全額負担するようなスキームのようにも見えます。オプションとして、サプリメントは個人負担にするという可能性もあるかもしれません。

測定機器とその付随サービスを売りたいタニタとサプリメントとその付随サービスを売りたいファンケルで、この企業従業員向けマーケットをどのように攻めていくかが知りたいところです。

「健診」の上手な活用法―健康経営、健康寿命延伸のための

会社の業績は社員の健康状態で9割決まる

 







[書評]日本人の健康のために必要なこと「健康長寿社会を実現する」(予防医療本読書感想)

日本政府等が声高に叫ぶ健康長寿社会はどうやったらできるのか。それを考えようと思って手にとった本。アカデミアの公衆衛生の一線級の専門家がこの観点から語った一冊です。



健康長寿社会を実現する
作者:辻一郎
出版社:大修館書店
発売日:2015/6/20
健康長寿、公衆衛生


東北大学医学部教授である著者が医療・健康にとって大きな問題である「2025年問題」の本質を捉え、公衆衛生として、「社会モデル」「生活習慣と医療費」「健康格差」「健康投資」「インセンティブ」「ソーシャルキャピタル」といったキーワードをもとに公衆衛生が何ができるかについて述べた一切である。

著書の中でまず、日本人は昔から長寿の国民であったわけではないことを述べています。1950年の日本人の平均寿命は男性で58.0歳、女性61.5歳でこれは主要先進国の中で最も短ったとのことです。平均寿命が首位を争うようになったのは、1979年とほんの数十年のことです。日本人は伝統的に日本食がヘルシーなので長寿だという話もありますが、本当に長寿になったのはそれほど昔ではないのが現実です。

著者は産業革命以降の公衆衛生の進歩を下記の4つのモデルにまとめています。

構造モデル:衛生的な環境を作り上げる
西武医学モデル:細菌学の進歩
臨床医学モデル:個々人の生活習慣・リスクを改善する
社会モデル:健康づくりを支える社会環境を創る

第二次大戦以降、臨床医学モデルを中心に健康長寿につながる施策を続けてきました。例えば、がんの早期発見、高血圧や糖尿病のような病態のコントロールによる合併症の低減などがあります。しかしながら、著者は臨床医学モデルも限界があると述べています。それは、臨床医学モデルでは、生活習慣は個人の努力でかえられるという幻想をもっていたことです。これは正しくないことは、我々個人の生活を振り返ればわかります。タバコが肺がんの原因になるとわかっている多くのヘビースモーカーがいます。食べ過ぎると太るということは十分に理解しているのに、ついつい食べ過ぎてしいます。この部分を変えていくことが社会モデルに求められています。

また、臨床医学モデルの問題については、下記のようにも述べています。

臨床医学モデルは、必然的に健康格差を拡大させるものであった。その格差は教育格差や社会経済格差とも連動している。

よくアメリカでは、低所得者の方が太っているという話があります。これは、低所得者の方が健康リテラシーが低いため、マクドナルドのような栄養価がそれほど高くない、安価でハイカロリーな食べ物をよく食べたりする等、教育格差が原因となっています。健康の知識をどのように広め、生活習慣を変えていけるかが、今の公衆衛生に求められています。

さらに、日本の公衆衛生の発展を阻害しているものとして、日本人の健康データの研究への提供への抵抗感をあげています。一方で、医療が進むデンマークでは、下記のような状況であることを述べています。

デンマーク国民は自分の医療あるいは社会経済的データを利用されることに不快に感じるものは少なく、これによって保健医療サービスが向上するのであれば構わないとかんがえる人が多い

日本人の健康長寿実現のためには、さらなる研究が必要であるが、それに対する社会的な理解も必要かもしれない。

本書で感じたこと

健康長寿を実現するには、医学的な技術も大事だが、それ以上にも社会モデルである人の心を健康のためにどう変えていくかの方が重要であることを再認識した。デジタルヘルス、新規検査、ウェアラブル危機など、そういった技術が人の心に対して、どうやって貢献できるのかについて、日々考えていきたい。



健康長寿社会を実現する
作者:辻一郎
出版社:大修館書店
発売日:2015/6/20
健康長寿、公衆衛生

<目次>
第1章 「2025年問題」の本質(急増する後期高齢者;世界最長寿からの転落 ほか)
第2章 公衆衛生の社会モデル(公衆衛生の4つのモデル;公衆衛生の社会モデル―その意義と政策;社会モデルの実践例;すべての政策に健康の視点を)
第3章 健康投資のエビデンスと戦略(医療費の現状と方向性;生活習慣が医療費に及ぼす影響;生活習慣リスクに応じた負担のあり方;健康づくりは投資;認知症予防の可能性とその経済効果;健康づくりの投資効果)
第4章 東日本大震災の被災地から「2025年問題」を考える(東京から石巻市雄勝町へ;被災地は「2025年問題」の先取り;「2025年問題」にどう対処するか?)



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