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[映画]グラディエーターでみるローマ皇帝の立場

映画から、ビジネスパーソンに有用なリーダーシップなどを学ぶこともできます。今回は、ローマの剣闘士(グラディエーター)の話です。組織の上に立つものがどういう危うさやそれに対するかについて、敵方から学びます。

あらすじとしては、西暦180年の大ローマ帝国で、皇帝マルクス・アウレリウスから非常に信頼を受けている将軍マキシマスという架空の人物を主役としている話です。皇帝アウレリウスはマキシマスに次期皇帝を指名しますが、その事実をしったアウレリウスの息子コモドゥスが皇帝アウレリウスを殺し、皇帝となってしまいます。

マキシマスは命を追われ、家族は処刑され、コモドゥスへの復讐に燃えます。マキシマスは、奴隷商人に買われ、コロシアムといった見世物の中で戦う剣闘士(グラディエーター)になって、戦い、コモドゥスへの復讐へと向かっていきます。

ストーリーはこれぐらいにして、この映画の中で印象的なシーンがあります。それはローマが誇る巨大コロシアムであるコロッセオでの出来事です。コロッセオで活躍したマキシマスに会おうと皇帝コモドゥスが戦いの場までできます。そこで、コモドゥスは自分に対して復讐に燃えるマキシマスに出会います。

通常ならば、皇帝であるコモドゥスはマキシマスを近衛兵を使って殺させるのは普通の手段だと思います。マキシマスはコモドゥスを殺したくて仕方がないのですから。

しかしながら、この場面で、コロッセオのたくさんの観客から、「殺すな!殺すな!」コールが出ます。それに対して、コモドゥスは結局マキシマスを殺さないというサインを出すしかありませんでした。

皇帝という名を聞くと、我々はなんでもできるような印象を受けます。気に入らないものは、力がなければ、どんなことでもできそうな気がします。しかし、少なくともこの時代のローマ皇帝は、民衆の支持によってのみ支えられている非常に危うい存在で、復讐に燃える敵(主人公)ですら、その支持がなければ殺せないのが実情でした。

これは企業経営で上に立つ場合でも似たことがあるのはないでしょうか。社長、それも株の過半を持つオーナー社長でも、民衆に相当する従業員の支持基盤なしでは、企業運営ができません。もちろん、その状況は企業ごとに異なると思いますが、そういう会社もあると思います。

コモドゥスは結局民衆の支持を得るために、コロッセオでマキシマスと一騎打ちに挑むことになります。皇帝が元将軍とはいえ、奴隷に挑むなんて普通ではありませんが、一方で、民衆の支持を得るためにそこまでやらなければいけないという切実感を感じさせます。

企業の社長も従業員の支持を得るためには、そういったことが(戦略的に正しいかは考えるとして)、必要なのかも知れません。


[書評]新しいことに挑戦する時の心得「石橋を叩けば渡れない」(イノベーション本読書感想)

この本は、山口周氏の「外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術」で紹介されていた本であり、とりあえず、何も考えず買った本です。本を買う前はどういう著者でどういう趣旨の本かもまったくわからず読みましたが、創造性に関する本でイノベーションを志すものとしては、自分に必要な本だとわかりました。それも南極越冬の話という視点が新鮮です。少し古い本ですが、繰り返し読んで自分の血肉にしていきたいと思います。



石橋を叩けば渡れない
著者:西堀 栄三郎
出版社: 生産性出版
発売日:1999/04
イノベーション、人生観、リーダーシップ


著者は研究者・技術者として活躍された方ですが、今回の話はそこでの経験を踏まえて、若いころの夢だった、南極での仕事の内容です。そこでの体験について、西堀さんが講演された内容をまとめて、1984年に発刊されたものです。古い時代の内容ですが、今のイノベーションに求められるものと通ずるものがある著書です。

若いころの夢はいつか実現する

そういった話から始まります。著者から、こういった発想が出てくるのは、下記のような人生観があるからです。

私は、若いころから、人間というものは経験を積むために生まれてきたのだ、という幼稚な人生観を持っています。だから、どんなにつらいことがあっても、それが自分の経験になると思ったら、貪欲にやってみるのです。どんなに人のいやがることでも、この考え方でいけば率先してやれるのです。

人間つらいことがあると、なんで自分はこんなことをしなければならいのか、周りの環境がこんなに自分を苦労させるのだ、等、ネガティブな感情が生じてしまいがちです。西堀さんのそもそも人間というものは経験を積むために生まれてきたというような人生感があれば、そのような状況も逆に楽しめるというものです。
そのような人生観から、西堀さんは戦地に赴くおいに下記のようなことを言っています。

人間はどうせ経験を積むために生まれてきたんやから、これから戦地へ行って、めずらしいことがいっぱいある。新しい経験がいっぱいできる。非常にうらやましい結構なこっちゃ

なかなかこの境地にいくのは難しいものです。

また、本書では、新発見に向けた取り組みとして、下記のように述べています。

みなさんの目の前には、新事実なるべきものがいっぱいあります。そこから新知識を得て、得た知識を自分自身、あるいは人のために役立たせ、社会に貢献できるような技術を確立していく。こう考えることが大事なのです。
その探し方の秘訣は何かというと、”観察”です。つまり、「変だぞ」と思うことがあったら、それを徹底的に究明することです。

ここで言っていることは、我々の周辺にそもそも新事実がいっぱいあるということです。とかく、例えば、新しい事業を取り組もうとすると、自分の知らない新しい世界、例えば、ネットが流行ればネット、原油価格が上がればエネルギー・シェールガス等、世の中のホットなところに目が行きがちです。しかしながら、本当に新しいものを見つけるためには、自分が今働いている仕事、暮らしている生活、そういったものをじっくり観察し、「変だぞ」を探して、究明していくことが大切です。この点は、他の本でも指摘している内容で、新しいことに取り組んでいく心構えとしてはとても重要なものではないかと思っています。

本書では、南極でのエピソードをもとに、未知の分野への挑戦の考え方を示しています。この未知というものをどのようにとらえ、どうマネージしていけばよいのでしょうか。調査については、西堀さんは下記のように述べています。

やるかやらないかを決心する前に、こまごまと調査すればするほど、やめておいた方がいいんじゃないかということになる。

それに対して、現実的には下記のようだと述べています。

現実の世の中は、石橋を叩いて危ないとわかっても、なお渡らねばならないことが多いのです。
現実は、すべて他動的に決められていることが多いのです。だから、その前にやるかやらんかということをいくら調査しても、そんなことは大した意味はないのです。
このように決心してから実行案を考えるのでなければ、新しいことはできません。
「やる」ということを決心してからの調査というものは、やる決心をする前の調査とは全然ちがいます。
いわゆる取り越し苦労ばかりしていたら、決して新しいことはできるものではありません。

我々は新しいことをやるときは、やる前にやるべきかを一生懸命調査をしたりします。例えば、新規事業を行うときには、その市場性や法律・規制、リスクなどなど、様々な角度から検討します。しかしながら、新しいことに取り組むときには、どんなに調査をしても答えがみえてこないものです。よって、やるやらないのために調査するのではなく、「やる」と決めた上で、どんな問題が起こるのか、それにどう対処するかという観点からの調査を積極的に進めていくべきです。

また、本書では新しい分野を切り開く人材の育成についても、下記のように述べています。

知識を「応用する才能」というものは、教えられるものではなく、失敗を恐れずに修行をさえて、育てるものなのです。
創造性開発に必要な条件として、いわゆる「成功の味をしめた経験」というものが、一番重要な意味を持っています。
創造性開発をするような場合には、当人をして調子に乗せることが非常に大切なモチベーションなのです。

人材育成で大事なことは、失敗を恐れずどんどん経験させ、その中で、新しいことを生み出すことの成功経験も与えて、モチベーションを高めていくことが重要であります。ただし、新事業などの新しい分野は個人レベルはもちろんのこと、会社レベルでも最近ではほとんど成功経験がなく、なかなか成功経験を積ますことが難しくなっているかもしれません。私の過去の経験から、自分の知らない新しい分野を開拓していくことは、あまりよくわからないので、他からサポートがないと、恐る恐るやってしまいがちです。メンター的な人が、小さなものでよいので、新しいことに対する成功経験をつませる工夫をし、恐る恐るではなく、自信を持って(調子に乗って?)新規分野を開拓させるようにしていくことが必要です。

本書で感じたこと

やはり新しいことに人生をかけて取り組んでいた人は、新規分野に対する人生観みたいなものがあるのだなと思いました。逆にいうと、この人生観というか哲学というか、そういったものがあれば、今回の南極のエピソードから、これまで経験していない他の新しい分野に挑戦するときにも応用がきくことがよくわかります。そうなると、いかに自分の新事業・新分野開拓に向ける自分の哲学を整理して、結晶化させていくことが大切だなと思います。



石橋を叩けば渡れない
著者:西堀 栄三郎
出版社: 生産性出版
発売日:1999/04
イノベーション、人生観、リーダーシップ

<目次>
石橋を叩けば渡れない
五分の虫にも一寸の魂(抄)


<関連書籍>
技士道 十五ヶ条 ものづくりを極める術 (朝日文庫 に 9-1)

西堀流新製品開発―忍術でもええで

創造力―自然と技術の視点から


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