「 古典・教養 」一覧

古典、日本の古典、中国古典、論語、孫子の兵法、韓非子、世界史、日本史、教養、リベラルアーツ、宗教、芸術、文化などに関する考察、ニュース、書評・読書感想です。

[教養本]ビジネスパーソンとしてグローバルな視点として本当に必要なもの「社会人のリベルアーツ」

奴隷的生き方からなんとしてでも脱したい。そのためのものの見方、それを知りたい。

リベラルアーツを通じて、グローバルの中での日本人や他の国の人の考え方の本質を知るのはどうすればよいか、それを知りたい人におすすめの本です。

「社会人のリベルアーツ」

リベラルアーツの一般的な説明を知りたいならば、この本はまとはずれとなるかもしれません。麻生川静男流のグローバルリテラシーを知りたい教養本です。

リベラルアーツを、奴隷的生き方から脱するための武器と位置づけています。そのために、重要なことは「文化のコア」とはなにかを理解し、そして、日本と世界がなにかを掴むことを説明しています。

特に歴史書の読み方については、歴史の概説書を読み込んで、事件のあらすじを知ることよりも、原点の歴史書を読むことを勧めています。原点とは、例えば、中国史としては、資治通鑑を勧めています。資治通鑑には、中国の歴史が生々しく記載されています。イベントではなく、生々しい実態を感じることが重要です。

また、話し方の手法としては、レトリックの重要性を述べています。レトリックは、日本語で修辞学と訳されるため、よく知らない人は、素晴らしい言葉を浸かった文章を作ることがレトリックだと思っている方もいるかもしれません。自分も実はそう思っていました。それは一つの見方に過ぎません。もともと、民主政治で大衆を自分側に引き寄せる演説の手法。それがレトリックです。

普通のリベラルアーツではなく、グローバルリテラシーのための李バラルアーツを身に着けたい方は、ぜひこの本を読んでみてください。


[中国政治本]現在の中国の政治の実態を暴く「習近平帝国の暗号」

なるほど!現在進行中の中国の政治の裏側はこうなっているのか。そう思わせるのがこの本。「習近平帝国の暗号2035」です。

新聞やニュースで中国の政治の話題をよくみるんだけど、いまいちその意図が意味がよくわからない。トランプや北朝鮮とのやり取りの裏側は何?そう思っている人におすすめの一冊です。

この本は392ページと厚めですが、その分、ここ数年の中国の動向を日経新聞の記者の視点で詳細に分析、解説しています。とはいえ、内容は難しいものではなく、素人にもさくさく読めて、面白く読める内容となっています。

鄧小平ではなく、毛沢東をモデルとし、その毛沢東をこえることを目指している共産党の総書記であり、中国の国家主席、中央軍事委員会主席である習近平。その様々な行動が明らかにされています。

習近平の政治闘争で勝ち抜いてきた点はすさまじいものがあるものはご存知のとおりである。その成果について、下記のように記載されている。

 まずは一気呵成に固めた「習近平思想」。戦いを勝ち抜く武器としての効果は絶大だった。前々任と前任の江沢民、胡錦濤をわずか就任5年で抜き去った。二人がついに果たせなかった自らの名前入りの思想を共産党規約に盛り込む豪腕を発揮したのだ。

中国共産党の歴史上での格は、すでに過去の最高指導者、鄧小平に並び、毛沢東にも迫るとまで説明され始めた。

江沢民、胡錦濤はおろか、長年政治の座に居座った鄧小平に並ぶとはすごい勢いである。

そういった、習近平の地盤は、その人事によってかためられてきた。中国の人事を、習近平の人事をあらわす内容として下記があげられる。

「人口13億人の巨大国家の幹部人事は、制度化された組織的登用と最も遠いところにある」

中国の政治学者の説明だ。習近平人事の顔ぶれにはかなりの特徴がある。大半は習近平が過去に地方勤務した際に知り合い、気心が知れている顔見知りだ。裏切らない。それが最も重要な要件である究極の縁故人事である。

平等に能力のある人間を引き上げるという我々の理想とは、全く異なる観点での人事、縁故こそが習近平のちからを固めていくのに重要だったというのは驚きでもある一方で、人治である中国では当然なのかもしれない。

著者である中澤克二さんは日本経済新聞編集員兼論説委員で、新聞記者として、中国をずっとウォッチし続けてきたプロである。他の著書としても、中国の政治関連で、下記を記載している。


中国の政治関連のニュースは読んでいるけど、一連の流れの裏側がどうなっているか、そのストーリーを知りたい。そんな方はプロの新聞記者の解説として、ぜひ読んでみてください。

 


[書評]あなたはロシアビジネスや歴史・政治を知ってますか?「ロシア皆伝」(おすすめ新興国本読書感想)

ロシア皆伝 (イースト新書)

[おすすめ読者]ロシアの政治やビジネス、文化がどういうものか知りたい方

今のロシアがアメリカに対して外交でできることは、国境線が長くてやたら多数の国と接していることを利用して、イランやシリアやトルコなどで地歩を築き、ここでアメリカが何かをやろうとする時はロシアの同意が必要な状況を創りだしておくことである。つまり、その同意を「高く売りつける」、同意する代わりにアメリカがロシアに何か代価を支払うようにさせてしまう。

河東哲夫さんは、元外務省で、ロシアやウズベキスタンなどの地域で活躍されて、今はロシア関連の鋭い分析をいれる評論家として活躍されています。

また、ホームページである「Japan and World Trends」や有料のメールマガジンである「文明の万華鏡」も運営されています。

この混沌とした世の中で、行動パターンが理解しにくいロシアの根底にある歴史や考え方は何かについて、元外交官が描く一冊です。

ロシアビジネスに関係される方、ロシアの今後について考え方は、一読の価値があります。

ロシアのあらゆる組織の原則は上意下達

河東哲夫さんは、ロシアの組織の原則について、次のように述べています。

その頂点に座っているのは大統領(ソ連時代には共産党書記長)で、すべての権限・威厳は大統領に集中し、その命令は絶対となる。絶対と言っても、それは大統領の恣意ではなく(大統領だって、政治・外交のすべてに目を通して命令を出せるわけがない)、大統領を取り巻く少数の特権層、高級官僚層の総意を体現してりることが多いのだが。これをロシアでは「垂直の権力」と読んでいる。「垂直」=「上意下達」、「上御一人のいうことは絶対」はロシアの政府だけでなく、ロシアの企業などあらゆる組織に通ずる原則である。民主的に振る舞おうとすると、「あのボスは弱い」と陰口をたたかれ、勝手なことをされるのがおちである。

ロシアは非常にトップダウンが強いというのは、ロシアの歴史に根ざしているもののようです。上が言うことは絶対というのは、プーチン大統領を見ているとよくわかります。当然、下の方が自由に動くということが制限されます。

そのような組織が良い悪いではなく、文化の違いと受け止め、その中でロシア人とどうつきあっていくのか、ロシアビジネスをすすめていくのか、考えていく必要があります。そうしなければ、日本的あるいは欧米的に正しいようなことをしても、ロシア国民からの支持が得られない状況になってしまいます。

欧米とロシアの違いは、上からの命令で動くこと

河東哲夫さんは、ロシアの気風として、次のように述べています。

それは、欧米の青年には周囲の状況、できることとできないことの境界を自分で見極め、その中で「個」としての自分ができることを切り開いていく期外があるのに大して、ロシアでは切り開くより既存の枠に乗っかって、のうのうとやっていこうとする気風があると言うか。まあ、世の中を大人たちの既得権益でがちがちに固められてしまったロシアの青年には、自分で運命を切り開けと言っても、酷なのであるが。
こうして、西欧の心と技、この二つはロシアでは相反する扱いを受け手きた。西欧の技は学ぶ、しかし西欧の心、つまり自由・民主主義・個人主義は反政府運動につながるものとして排除される。

(中略)

だから、ロシアの組織では「自分で何か進んでやれば罰せられるだけ」という格言があり、皆なかなかイニシアティブを取ろうとしない。ボスの指令を待って始めて動くほうが安全なのである。

(中略)

命令がなければ安易もやらない者、逆にどこに飛んで行ってしまうかわからない者、その両極端の間でちょうどバランスが取れている人材は、なかな見つからないのである。

ロシアはなかなか、イニシアティブをとらない国民性のようです。とにかく、しっかり命令をしていくことが重要で、そうでないマネジメントは難しそうです。

もともと、資源大国で製造業がほとんどない国であるので、当然資源は既得権益でかためられています。よって、その既得権益をもつ人に、どのように取り入るかが重要で、自分から新しい価値を作っていくのは、ロシアの環境から難しいように思います。

製造業を育てようと思っても、資源中心の経済システムなので、景気が良い時はルーブル高となってしまい、ロシア国内製造業は衰退します。ルーブル安の景気が悪い時には、投資や購買が弱くなって、結局育ちません。

よって、この状況は製造業が育たないロシアの中で、構造的な問題となっています。

 本書で感じたこと

組織マネジメントは、その国の特性・歴史・文化をよく踏まえることが重要だということがよくわかる内容でした。グローバルで統一したマネジメントというものは難しく、各国ごとに、よくその国の文化を理解した人にマネジメントを任せていくしかなさそうです。


ロシア皆伝 (イースト新書)

著者:河東哲夫
出版社:イースト・プレス
発売日:2015/12/10
ロシア、新興国

<目次>
第1章 ロシア―その面貌
第2章 歴史のトラウマ―栄光と悲惨
第3章 ロシアという国の経済―停滞と格差の構造
第4章 ロシアの人々―欲望と渇望のシンフォニー
第5章 ロシアの政治―収まらないものをどうやって治めるか
第6章 ロシアの外交―その無力、その底力
第7章 日本とロシア―すれ違いの二〇〇年
<著者紹介>
河東哲夫[カワトウアキオ]
1947年東京生まれ。1970年東京大学教養学部を卒業後、外務省に入省。ハーバード大学大学院ソ連研究センター、モスクワ大学文学部に留学。外務省東欧課長、文化交流部審議官、在ボストン総領事、在ロシア大使館公使、在ウズベキスタン・タジキスタン特命全権大使を歴任。日本政策投資銀行上席主任研究員、東京大学客員教授、早稲田大学客員教授を経て現在、評論家として活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



[書評]日本の政治を冷静に見てみる「「リベラル」がうさんくさいのには理由がある」(橘玲本読書感想)

「リベラル」がうさんくさいのには理由がある

[おすすめ読者]リベラルとはどういうものか知りたい人、橘玲ファン

兵士の銃を評論家のペンにたとえれば、事情は明白だ。ペンも狂気たりうる。「三百数十人」もの人間を殺した極悪人のことを書くとすれば、資料の質を問い、さらに多くの象限に傍証させるのが、ジャーナリストとしての最小限の良心ではないのか。
戦記の作者の何人かは、沖縄在住の人である。沖縄本島と渡嘉敷の航路は二時間足らずのものなのに、なぜ現地へ行って詳しい調査をしなかったのか。その怠慢を攻められてもしかたあるまい。

橘玲さんの作品は昔からいろいろ読んでいます。このブログでも、中国私論を紹介してきました。ですので、この本も発売日に買い、一気に読みました。

リベラルvs保守派という言葉がありますが、保守派というものは、なんとなく、年齢層が高そうなイメージがあり、リベラルこそが自分の持つべき信条な気がします。それぞれをよく理解できていない私の間違ったイメージですが。しかしながら、本書は、そのリベラルのうさんくささを見事に表現しています。

最初は太平洋戦争での沖縄戦における集団自決について書かれています。その時のリベラルの立場の報道とその結果の法廷闘争になった内容について、書かれており、私はこの内容は知らなかったので、とても興味深く読めました。

プレイボーイに連載された内容のため、繰り返し同じようなことを言っているところもありますが、軽めにサクサク読めます。軽減税率、女性活用、食品の安全問題、福祉国家など、世の中で話題になっている内容を海外を事例にしながら、現実はどうかについて語っています。

成熟した国家では、政策の選択肢はほとんどない

橘玲さんは、TPPや政策について次のように述べています。

日本ではTPPも「損か得か」というジコチューな視点でしか語られませんが、安全保障を最優先する安倍政権に参加を拒否する選択肢がないことは「地経学」的に考えれば明らかです。

(中略)

ついでにいうと、消費税増税は管政権、原発再稼動は野田政権の発案です。日本のような成熟した国家では、誰が政権の座に就いたとしても政策の選択肢はほとんどないのです。

結局のところ、どの政党が政権をとるかに関係なく、日本政府としてやっていくことは、遅い早いのタイミングはあるかと思いますが、それほど選択肢がないです。それは、いろいろな論争があるようにみえても、政治の観点から論理的にみれば、結論は一致してくることを表します。

 本書で感じたこと

本書はリベラルや政治について主に述べていますが、論理的に考えれば似た結論に一致するのは、必ずしもこれは政治だけの話ではないです。書評「未来に先回りする思考法」の記事でもありますが、IT業界で未来を見通す先は目的地までのルートは異なっても、目的地は概ね一致します。未来の見通しも、論理的に考えれば似た結論に一致していくように思えます。


「リベラル」がうさんくさいのには理由がある

著者:橘 玲
出版社:集英社
発売日:2016/5/26



[書評]イスラム社会の様々な疑問を解決してみませんか?「イスラムの読み方」(おすすめ宗教解説本読書感想、山本七平)

イスラムの読み方 (祥伝社新書)

ですから中東の企業グループなどで話をするときに、中東では宗教とは法律と思え、信心だと思っていると、とんでもないことになる。これは国家を超越し、国家よりも強いんだと強調するんですが、なかなか理解されません。

山本七平さんは、聖書やユダヤ関係書籍も含め、様々な有名な著作を残された方です。特に外交評論家として、イスラム教とユダヤ教には大変お詳しいです。

この本は、山本七平さんが過去に記したイスラム社会が近代化しない理由、民主主義が根付かない理由、テロが起こってしあう理由について、対談形式でわかりやすく記したものの復刊版です。

日本人がイスラム社会とどのように付き合っていけばよいか知りたい方には一読の価値がある本です。

イスラム社会では契約書は意味がない

山本七平さんは、イスラム世界での考え方について、次のように述べています。

宗教的大義名分は、それを掲げられるといやといえない面があるわけで、これはイスラム世界全部に共通しています。

(中略)

たとえば加瀬さんと私が話し合いでものを決める。その合意が宗教法に反していたら、イスラム社会では、その話し合いははじめからなかったに等しいことになります。ですからあの世界へ行って、話し合いをするのは絶対に間違いなんです。

(中略)

だから、中東関係者に言うんです。どんなに厚い契約書をつくっても、入札でたとえ落札しても、それだけではムダ。はじめからムダだということをちゃんと覚悟していないと、あの社会で仕事はできないんだと。極端な言い方をしますと、同一宗教宗派団体のう内部でしか契約は成立しないというおとです。これは大きな問題です。

中東では宗教的大義名分がすべてだということがわかります。法律や契約は所詮は、宗教法の下にある概念に過ぎません。それが、欧米式を普通と思っている我々が勘違いしてしまう結果になります。

中東でビジネスを行っていく上では、契約書など、我々が普通だと思っている概念を一つ一つ中東式ではどう考えるかを、イスラムの専門家とよく検討してから進める必要があります。

ヨーロッパ式と中東式の近代的原理は異なる

山本七平さんは、なぜこのような考えの違いが生まれたかの背景について、次のように述べています。

山本:すべての宗教、宗派が、その所属する人間の裁判権を持つという制度が、制度として確立したわけです。
ですから、最初に言いましたように、近代国家の原則に反するといわれても、中東には中東の近代的原理が、四百年かかって出来上がった。その間、ヨーロッパは四百年かかってヨーロッパ式の近代国家の原則をつくってきたわけで、これはそもそも方向が違うわけで、比較すること自体に無理があるのです。日本は近代のヨーロッパしか知らず、その真似をし、それを唯一無二の原則だと思い込んでいますから、その基準で見ると、なにもかもわからなくなってくると思います。

結局のところ、我々が普通だと考える近代国家の原則がいつできたかによります。たかだか400年ぐらい前からの歴史的経緯によりできたものに過ぎません。中東も同様に400年ぐらいかけて、中東の近代的原理を作り上げました。それらは決して交わるものではありません。

そういった歴史的な差が、現在のよくわからないイスラムを作っています。今一度、中東の歴史を我々は学ぶべきかもしれません。

 本書で感じたこと

中東とは、そもそも欧米とは、歴史的に違う進化をしてきた地域だとわかりました。多くの地域は違う進化をしても、欧米流を学び取って、それをとりいれているので大丈夫ですが、中東は異なるようです。この違いを理解するためには中東の宗教・歴史について、もっと学ぶ必要があることがわかりました。


イスラムの読み方 (祥伝社新書)

著者:山本七平 加瀬英明
出版社:祥伝社
発売日:2015/3/1
イスラム教、宗教

<目次>
序章 イラスムを理解するための基礎知識―日本人には理解できない宗教法体制とは何か(イスラム世界を、どう区分けして考えるか;イラン革命の不思議 ほか)
第1章 マホメットとコーラン―イスラム教の成立と爆発的勢力伸長の謎(商人でもあったマホメットの特異性;コーランと新約聖書の違いとは ほか)
第2章 「宗教」が「国家」に優先する世界―イスラム社会に民主主義が根付かない理由(はたしてイスラムは「砂漠の宗教」か;サウド家の私有財産としてのサウジアラビア ほか)
第3章 イスラムの近代化は可能か―前途を暗示するレバノン、イランの失敗(イスラム教の聖典は宗教というより憲法;宗教国家が近代化をはかる矛盾 ほか)
第4章 イスラエル問題とアラブ人―うかがい知れぬ双方のホンネとタテマエ(荒涼たる地だったパレスチナへの、ユダヤ人の入植;あまりにも原理原則に走りすぎたシオニストたち ほか)
第5章 イラスム世界と日本―まったく異質の社会と、いかに付き合うべきか(「アジアは一つ」という大いなる誤解;百欲しいときに二百を要求する国際社会 ほか)
第6章 イスラム原理主義の台頭と、その行方―なぜ今になって、流れが変わったのか(テロの原因は、イラク戦争ではなかった;イスラム教の成立と、キリスト教との違い ほか)
<著者紹介>
山本七平[ヤマモトシチヘイ]
1921年、東京生まれ。戦後、山本書店を設立し、聖書やユダヤ関係書籍の出版に携わる。別名で書いた『日本人とユダヤ人』が大ベストセラーに。独自の手法で日本と日本人を論じて著書多数。1991年、没

加瀬英明[カセヒデアキ]
1936年東京生まれ。外交評論家。慶應義塾大学、エール大学、コロンビア大学に学ぶ。77年より福田・中曽根内閣で首相特別顧問を務める。日本ペンクラブ理事、松下政経塾相談役などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



[書評]現代を生き抜く知恵のための世界史を知っていますか?「大世界史 現代を生きぬく最強の教科書」(教養・歴史本読書感想、池上 彰, 佐藤 優)

大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)

本書の『大世界史』というタイトルには二つの意味がある。第一は、世界史と日本史を融合した大世界史ということだ。日本の視座から世界を見、また世界各地の視座から日本を見、さらに歴史全体を俯瞰することにつとめた。第二は、歴史だけでなく、哲学、思想、文化、政治、軍事、科学技術、宗教などを含めた体系知、包括知としての大世界史ということだ。

著者は説明がいらないくらい有名な2人です。

池上彰さんは誰もが知っている世の中の出来事を非常にわかりやすく説明する方です。佐藤優さんも元外務省というキャリアから、世界情勢や社会制度について鋭い分析をします。その2人の大世界史に関する対話ということで、非常にさくさく読めますが、示唆に富んでいます。

我々も世界で起こっていることを理解するためには、もっともっと深く世界史を学ぶ必要があるかもしれません。

世界の今と自分の立ち位置を学ぶための世界史

佐藤優さんと池上彰さんは世界史を学ぶ意味について、次のように述べています。

池上:まったく同感です歴史はいまを理解するためにある。たとえば、新聞を読みながら、事件の背後に世界史の知識を重ねてみる。すると、その事件が立体的に見えてきますあるいは、歴史を学ぶ際に、現代の様子も思い浮かべてみる。
たとえば、いま中国が南シナ海からインド洋まで勢力を拡大しようとしている。これはあたかも、明の鄭和の大航海の再来であるかのようです。

池上:「われわれはどこから来たのか、われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」というゴーギャンの有名な絵がありますが、私たちが歴史を学ぶのは、一言で言えば、今の自分の立ち位置を知るためです。

佐藤:読書や歴史を学ぶことで得た代理経験は、バカにできるものではりません。この代理経験は、いわば世の中の理不尽さを経験することでもあります。しかしだからこそ、社会や他人を理解し、共に生きるための感覚を養ってくれるのです。

世界史というと学校時代に教科書で勉強したというイメージが強いです。テストとか試験とかで点をいかに稼ぐかという印象を持っていると思います。

その後は、趣味として、各国史(ヨーロッパ史、中国史など)をそれぞれ深めていく方も多いと思います。

「大世界史」では、勉強でも、趣味でもなく、自分の世界の中の立ち位置として、世界史の学ぶことの重要性を述べています。

確かに、世界情勢について、なぜこのようなことが起こるかなかなかわからないことも多くなっています。なぜ、イスラム国が活動するのか。トルコや中国、ロシアは何を考えているのか。そういったものは、各国の歴史を眺めることでわかってくるものです。

トルコが目指すところは「オスマン帝国」の再興

池上彰さんはイランやトルコについて、次のように述べています。

池上:イランがペルシャ人の国であることを知らない。まず初歩から説明しなければなりませんね。

池上:イランには「ペルシャ帝国」、トルコには「オスマン帝国」という、それぞれかつての「帝国」としての国があります。トルコのエルドアン大統領は、まさに「オスマン帝国よ再び」という動きを見せています。

我々の世界史の知識はどうしても、ヨーロッパやアメリカの歴史、あるいは中国、韓国などの近隣の歴史に偏ってしまいます。あまり、中東についての歴史に詳しい人は多くはないのではないでしょうか。

イランは紀元前後数世紀にわたって非常に権勢を誇った「ペルシャ帝国」をオリジンとしています。そのことはどれくらいの日本人が知っているのでしょうか。よって、国民のアイデンティティとして、「ペルシヤ帝国」というものが今でも残っています。

トルコはもっと最近で、オスマン帝国は第一次世界大戦で負けるぐらいまで、非常に大きな力をもっていた帝国です。つい100年ぐらい前までにあった帝国です。当然トルコ人がそれを誇りとしていることは容易に考えられます。

なかなかそこらへんの元帝国の考え方というか、アイデンティティを理解していない世の中を読むのが難しいです。それらの国で突然偏った思想が出てきても我々は理解できません。中国もしかり、ロシアもしかりです。ヨーロッパ以外の世界史もよく勉強する必要がありますね。

ギリシャはヨーロッパではなく、実はトルコ人の国

佐藤優さんはさらに、EU加盟国である我々もそれなりに歴史を学んだことがありそうなギリシャについて、次のように述べています。

佐藤:ギリシャの問題に関して言えば、そもそもギリシャを「ヨーロッパ」と考えるのが間違いなのです。
現在のギリシャは、十九世紀に恣意的につくられた国家です。ロシア帝国と大英帝国のグレートゲームのなかの仇花みたいなものです。

佐藤:1829年に、古代ギリシャの滅亡以来、1900年ぶりに独立を果たすのですが、国民は、DNA鑑定をすれば、トルコ人と変わらない。

佐藤:ですから、現代のギリシャのアイデンティティは、近代になってつくられた「伝統」であって、今の日本人が我が家は源氏か平家かと決めて偽系図をつくるようなものです。

池上:今のギリシャ人自身も、その「伝統」を信じ込んでいますね。

ギリシャというとアテネとかスパルタとか、そういった民主主義の国の集まりを思い出すのではないでしょうか。あるいは、アリストテレスとか、ギリシャ哲学とかを思い出すかもしれません。

びっくりした内容ですが、今のギリシャ人は古代ギリシャ人がオリジンではないということです。トルコ人だったというのは驚きです。

確かに、かなり前ですが、ギリシャに行ったことがあります。その時感じた違和感として、古代ギリシャというものを街並みとかから感じませんでした。もちろん、パルテノン神殿(自分が行った時は工事中だった)とかは残っています。

古代ギリシャなんてはるか昔だから当たり前で、歴史を調べるとオスマン帝国時代の方が長いことがわかり、その当時は、納得しました。今回の佐藤優さんの記載している内容で、さらにその違和感が正しかったということがよくわかりました。

ギリシャとはトルコをベースに知識として古代ギリシャをまとったものと認識するのが正しいと思います。

イスラム教とドローンにみる戦争の変化

佐藤優さんは、人命の価値、人命のコストの観点から、現代の戦争について、次のように述べています。

佐藤:アメリカや日本などの先進国がどうして戦争を避けるかといえば、人命の価値が非常に高いからですね。ところが、イスラム原理主義を辛抱する武装組織は、「聖戦」という概念を追ってくることで、人命のコストを下げることに成功してしまった。戦士として、殉教して天国に行けるのですから死を恐れない

この「非対称」によって、彼らは戦いつづけることが可能になっているのです。

ところが、ドローンは、新たな「非対称」を生み出してしまったのです。これは深刻な事態です。

戦争を人命の価値から考えるというのは、これまで私になかった視点です。確かに、戦争において、先進国が何を躊躇するかというと、国民である兵士が死んでしまうことに対する反対です。これはどの国でも同じでしょう。

もともと、国民国家とは、ナポレオンの歴史が示す通り、国民が国家のために死ねるというのが戦争における強さだったと思います。それより前は、カネで傭兵を買って、戦っていた。当然傭兵は国が存亡の危機にある時に、命をはってくれるわけではありません。

それがいつしか、国民国家で国民が国家のために命を捨てて戦ってくれなくなりました。一方で、イスラム国などの戦士は殉教の精神から国や宗教のために、命を捨ててくれます。それが戦争における強さの差となっています。

その宗教に対して、ドローンというテクノロジーがあらわれました。自国民の人命のコストが大幅に下がることで、戦争をするのが容易になっていく方向です。

映画や漫画、アニメの世界だけであった機械 vs 機械の戦争になっていくのでしょうか。モビルスーツで人が動かすのではなく、遠隔操作でロボットが戦う世界。その中で戦争という位置付けも変わっていくことが予想されます。

かなり脱線ですが、会社に例えるとカネで働く従業員よりも、会社のために命を捨てられる(死ぬ気で働く)従業員がいるところが強いということも考えられます。そうなると、参考になるのは、宗教とテクノロジー。すなわち、会社の思想を作るか、テクノロジーで機械が死ぬ気で働くかがポイントとなります。テクノロジーは結構模倣されてしまいますが。

本書で感じたこと

あるパラダイムシフトが起こる時には、そこに対するなんらかの価値の変化があるものかもしれません。戦争における人命の価値というものが宗教やテクノロジーによって、変遷し、それによって戦争にあり方そのものが大きく変わることは、佐藤優さんが述べる通りです。

宗教やテクノロジーなどの変動が、世の中の我々がもっている価値をどうかえるかを深く考察すること。それこそが、世の中の今後の動きを理解していく鍵になります。


大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)

著者:池上 彰, 佐藤 優
出版社:文藝春秋
発売日:2015/10/20
世界史、教養

<目次>
1 なぜ、いま、大世界史か
2 中東こそ大転換の震源地
3 オスマン帝国の逆襲
4 習近平の中国は明王朝
5 ドイツ帝国の復活が問題だ
6 「アメリカvs.ロシア」の地政学
7 「右」も「左」も沖縄を知らない
8 「イスラム国」が核をもつ日
9 ウェストファリア条約から始まる
10 ビリギャルの世界史的意義
11 最強の世界史勉強法



[書評]教養とは何かを今一度考える「おとなの教養」(リベラルアーツ本読書感想)

リベラルアーツの本を読んで、ふと教養ってなんだろうと興味を持った時に本屋でたまたま目にした本です。教養ってわかるようなわからないような言葉だなと思う今日このごろです。この本から、ひとつの視点を得ようと思いました。



おとなの教養―私たちはどこから来て、どこへ行くのか? (NHK出版新書 431)
作者:池上 彰
出版社:NHK出版
発売日:2014/4/9
教養


テレビ等でわかりやすい解説でお馴染みの池上彰さんが教養について解説している本です。

教養(リベラルアーツ)とは歴史的には、文法、修辞学、論理学、算術、幾何学、天文学、音楽の7つの科目を習得することであったそうです。ではなぜ、教養を身につける必要があるかについて、下記のように作者は述べています。

MITの話では、最先端の科学をいくら勉強しても、世の中の進歩は速いからだいたい4年で陳腐化してしまう。社会に出て、新しいものがでてきも、それを吸収し、あるいは自ら新しいものを作り出していく、そういうスキルを大学で教えるべきである。それが教養である。

すぐに役に立つことは、世の中に出て、すぐに役に立たなくなる。すぐには役に立たないことが、実は長い目で見ると、役に立つ。そのような基盤が教養である。基盤がしっかりしていれば、世の中の動きが早くてもブレることなく、自分の頭で物事を深く考えることができるようになる。

かつて私の学校の先生の言葉に、「知識は陳腐化する。なので、ものの見方を学んだりや人との出会いを大切にしなさい」と言われたことがあります。これは、必ずしも教養について言われたコメントではありませんが、ビジネスの教養=ものの見方という意味では同じことを述べているのかもしれません。

そして、池上彰さんは自分を知ること、すなわち自分のルーツこそが教養だと主張しています。その現代の教養とは、「宗教」「宇宙」「人類の旅路」「人間と病気」「経済学」「歴史」「日本と日本人」であると述べており、それぞれに対する独自の見解を述べています。

例えば、歴史については、下記のように池上彰さんは述べています。

歴史は時代の勝ち組によってつくられてきたという側面がある。私達の過去を記した歴史をどのように捉えればいいのか。

特に、近代史を考えると、欧米が勝者として君臨してきたことは明白であるので、我々は世界史というものは欧米中心に作られたもの、欧米人がどういうポジションだったかを認識するものだと理解する必要があります。

次に「日本と日本人」という観点についてとりあげます。「日本人」という名前は古くからあるものではなく、明治以後にできたものだと下記のように、述べています。

「日本人」は1873年に誕生した。日本という名前は古くからあったが、日本人は外国人とつきあうことによって生まれた。1873年の太政官布告の前は国籍という考え方がなかった。明治初期に日本人と外国人の結婚を想定したとき、初めて、国籍という概念が生まれた。それまでは近代的な概念でいう日本人は存在しなかった。

すなわち、日本人だというアイデンティティができたのは、それほど昔のことではないことを意味しています。なぜかというと、江戸時代までは、中国や朝鮮半島などの一部との海外の交流がありましたが、島国であることもあり、ほとんど日本だけが単独に存在していました。そうすると、日本とか日本人とかいうアイデンティティはあまりいらないです。明治維新以降、

 

この国家意識という考え方は、宗教と国家という観点でも非常におもしろい点である。例えば、宗教の違いと国家について、下記のように池上彰さんは述べています。

国家が国家意識をうから植え付けていくと、いつしか国家ちおう単位で同胞意識が生まれることもある。我々も明治維新後のさまざまな施策によって日本人という意識を持つに至った。イラクでもシーア派、、スンニ派の宗教的な違いよりも、イランという国民意識がイラン・イラク戦争の時に勝った。同じシーア派教徒でも国家のために戦った。

自分のルーツというものは、その時々によって、国家、宗教、歴史、経済など、様々なものによって醸成され、日々変化していくことが予想されます。そういったものを理解するためにも、おとなの教養を身につけていかなければならないのかもしれません。

本書で感じたこと

最近起こるめまぐるしく次々起こるイベント。ISIS、テロ、中国経済など。こういったものの本質を理解するためには、土台となる様々なものを習得していくことが必要です。やはり、一番の基盤は歴史から学ぶことであるように思いました。



おとなの教養―私たちはどこから来て、どこへ行くのか? (NHK出版新書 431)
作者:池上 彰
出版社:NHK出版
発売日:2014/4/9
教養

<目次>
序 章 私たちはどこから来て、どこへ行くのか?――現代の教養七科目
第一章 宗教――唯一絶対の神はどこから生まれたのか?
第二章 宇宙――ヒッグス粒子が解き明かす私たちの起源
第三章 人類の旅路――私たちは突然変異から生まれた
第四章 人間と病気――世界を震撼させたウイルスの正体
第五章 経済学――歴史を変えた四つの理論とは?
第六章 歴史――過去はたえず書き換えられる
第七章 日本と日本人――いつ、どのようにして生まれたのか?



[書評]中国人の理解には必携「知っておくと必ずビジネスに役立つ中国人の面子」(異文化本読書感想)

中国人との知り合いとどのように付き合っていけばよいか。そんなことを考えている時に、参考にしてみようと言うことでamazonで購入した一冊。



知っておくと必ずビジネスに役立つ中国人の面子(メンツ)
作者:吉村 章
出版社:総合法令出版
発売日:2011/5/21
中国、ビジネス


著者は、中国進出のサポートに長年関わってきた、中国ビジネスの専門家である。そんな専門家が中国人を理解するための一つの見方がこの本である。近年、中国人の爆買いということで注目を集めているが、その理解も面子からわかる部分もある。

著者は中国人には3つの面子があるとしており、その3つの面子から考えると、中国人の行為は理解できていくという。

網面子:人間関係を広げる
貸し面子:人間関係を深める
義の面子:人間関係を安定させ、維持し、より深める

 

中国人の不可思議な行動もこの面子の3つの側面から理解できるという。例えば、日本人からみると、かなり大げさな見栄や主張、または、すごい人脈の自慢みたいなものを感じた場合にも、すべて、この面子からきていると考えられる。中国人はそのような行動を行いながら、こちらを試している部分もある。

中国人が持っている鋭い人間観察力と敵か味方かを瞬時に見分ける判断能力は、日本人にはなかなか真似できないものです。

中国人は革命、内戦、天才、飢餓等の厳しい歴史の中で培われた鋭い人間観察力をもっていることである。「自分の見は自分で守る」それが中国人の考え方です。よって、下記のような考え方をもっています。

中国人は「会社」というコミュニティにシェルター機能としての多くを期待していません。

そのため、人との関係(グアンシ)中心の世界ができあがっています。それはビジネスの始め方にもつながっています。

仕事があるから友人になるのではなく、まず友人になって2人で仕事を探しだす。

人が組織を作るのか、組織が人に役割を与えるのか、どちらが先かの議論は長くありますが、中国人の面子という観点からみると、関係(グアンシ)が仕事を作っていくということになります。いかに、いっしょに仕事を探していくものを見つけていくことが中国でのビジネスではカギとなるのかもしれないです。

本書で感じたこと

中国人にとって面子の観点からみると、もっと私も自分をさらけ出して中国人にみせていかないと、その後の深い人間関係を築いていけないかもしれない。そう思い直すところがありました。



知っておくと必ずビジネスに役立つ中国人の面子(メンツ)
作者:吉村 章
出版社:総合法令出版
発売日:2011/5/21
中国、ビジネス


<目次>
序章 「面子」理解が中国人理解の近道
第1章 中国人の「タマゴ型コミュニティ」を理解する
第2章 中国人の「網面子」を理解する
第3章 中国人の「貸し面子」を理解する
第4章 中国人の「義の面子」を理解する
第5章 「面子」を活用した中国ビジネス成功のテクニック


[書評]中国を理解するための新しい見方「橘玲の中国私論」(おすすめ異文化本読書感想)

橘玲氏は「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計入門」をはじめ、様々な著作を欠かさず読んでおり、常にウォッチしている作家です。今回の著作もさらに中国に関するものとして、中国好きの自分としては、作者買いで手にとった一冊です。。



橘玲の中国私論—世界投資見聞録
作者:橘玲
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2015/3/6
中国、投資


最初にページに中国の鬼城(ゴーストタウン)についてカラフルな写真つきでの解説があります。中国といえば、政府による過剰投資により、多数のマンションなどが開発され、多くの住まれていない建物ができています。それが鬼城です。そんな非常に目につく鬼城の解説によりはじまる本書ですが、それは序章に過ぎず、中国人に対して、独自の視点で切り込んだ一冊です。内容は実体験をベースにした解説であるため、また、連載記事やメルマガをまとめたものであるため、比較的ライトにさくさく読めます。その分、全体のまとまりは少し弱いですが、中国に対する新たな視点を得られるという点では特筆するべきものがあります。

作者は、中国について、「人が多すぎる」と「グワンシ(関係)」の2つのキーワードからいろいろなことを説明可能であると述べている。その根底には、ひとつの場所に生まれて、死んでいく日本社会と、いろいろな場所での移動が前提となっている中国社会との違いがもとに、日中の様々な違いを生んでいるという考え方があります。

中国みたいな社会では、その場所や企業よりも、人的ネットワークが優先される社会を産んでいきます。

中国は「関係(グワンシ)の社会」だといわれる。グワンシは幇を結んだ相手との密接な人間関係のことで、これが中国人の生き方を強く規定している。

この幇も中国を理解するためには重要なキーワードです。

幇は「自己人(ズージーレン)」ともいい、中国人にとってもっとも根源的な人間関係だ。いったん幇を結ぶと家族同様に(ときには家族以上に)絶対的な信頼を置く。

人口が多すぎることや、グワンシによる人間関係はある程度中国についての知識がある人ならば、知っていることですが、それを中国の様々な現象に結びつけたところがこの本のおもしろいところだと思います。

日本人との違いは下記のように述べています。

日本の場合、安心は組織(共同体)によって提供されるから、村八分にされると生きていけない。日本人の社会資本は会社に依存しており、不祥事などで会社をクビになれば誰も相手にしてくれなくなる。

それに対して中国では、安心は自己人の「グワンシ」によってもたらされる。

これについて、おもしろいエピソードで語っています。それは、幹部からいきなり同業他社からオファーがあり辞めるというと日本では怒りだすが、中国ではおめでとうというとのことです。グワンシはそのまま続くので、いつか、新しいビジネスが生まれる可能性があるということで、中国ではおめでとうと言います。いかに日本人的な感覚(幹部が辞めるのはけしからん)というものは、日本的な会社を中心とするものの見方を示しているに過ぎないということを実感しました。

本書で感じたこと

中国の理解するキーワードである「人が多すぎる」「グアンシ(関係)」をキーワードに、中国がどのような社会になっていくか考えてみたいです。中国でイノベーションが起こっていくのか、それともイノベーションも鬼城のようになっていくのか。グアンシはどのようにイノベーションに寄与していくのか。論点はいろいろありそうである。



橘玲の中国私論—世界投資見聞録
作者:橘玲
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2015/3/6
中国、投資

<目次>
●はじめに 中国を旅するということ
●PART1 中国人という体験
1 ひとが多すぎる社会
2 幇とグワンシ
3 中国共産党という秘密結社
●PART2 現代の錬金術
4 経済成長を生んだゴールドラッシュ
5 鬼城と裏マネー
6 腐敗する「腐敗に厳しい社会」
●PART3 反日と戦争責任
7 中国のナショナリズム
8 謝罪と許し
9 日本と中国の「歴史問題」
●PART4 民主化したいけどできない中国
10 理想と愚民主義
11 北京コンセンサス
12 中国はどこに向かうのか



[書評]データをもとに見る本当の戦後経済「戦後経済史は嘘ばかり」(おすすえ歴史分析本読書感想)

本屋でたまたま目にして手にとって興味をもって、購入。経済データをしっかり分析することで、これまでに世の中で言われている経済に関する迷信を切って捨てます。


戦後経済史は嘘ばかり (PHP新書)
作者:髙橋 洋一
出版社:PHP研究所
発売日:2016/1/16
経済、歴史

歯に衣着せぬ語り口の数学科出身の元大蔵省、小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンの作品です。

いきなり我々が通説として知っている下記についてばっさりと切ります。

みなさんは、次のようなことを信じていないでしょうか。
(1)高度成長は通産省の指導のおかげ
(2)1ドル=360円時代は為替に介入していない
(3)狂乱物価の原因は石油ショックだった
(4)「プラザ合意」以降、アメリカの圧力で政府が円高誘導するようになった
(5)バブル期はものすごいインフレ状態だった
これらはいずれも間違いです。

これらの中身については、詳しくは、本書に譲りますが、そのための分析としては、過去のデータにもとに、原理原則をもって、恣意性をなくして、状況を分析することの大切さを述べています。そのためには、モデルとなる理論、すなわち「こうなるはずだ」というものを作り、それを検証し、分析し、「はずだ」があたっているかをみて、あたってない場合は、また、分析して理論を修正する。その繰り返しが必要となります。いわゆる理系による思考の積み重ねこそが正しく状況を理解するための道具立てとなるということです。

不良債権問題についても、不良債権が早く処理できなかったことが問題というよりも、誤った金融政策により、長期間にわたって、GDPが伸ばせなかったことが問題の本質だと述べています。不良債権問題は銀行が不良債権を処理できなかったと思い込んでいた私としては、正しく世の中の流れを分析していく必要があることを気付かされました。

バブルに関しては、下記のようなコメントをしています。

「バブルを起こさない」ことばかり考えて、経済を減速させるような手を打ち続けるより、「バブルが起きたら正しい処理すればよい」と考えて、恐れずに適切なマクロ経済政策を展開していくべきなのです。

闇雲にバブルをおそれ、それを抑えこもうとするよりも、バブルは起こりうることを前提に、いかに舵取りをして、大きな被害を出さずに乗り切っていくか、そんなことを考えていくことが必要です。この本は日本経済についてのみ述べていますが、中国バブルの政府の舵取りも同様な発想が必要かもしれません。

本書の中で印象的だったのは、下記の内容です。

「常勝小泉・竹中」のイメージがあるかもしれませんが、最初は敗戦続きでした。

小泉・竹中ラインは強い力をもって進めてきたと思っていましたが、初期はそうではなかったとのことです。ただ、竹中氏のすごいところは、こてんぱんに負けた理由を分析して、どうやったらうまくいくかを考え、変え続けたことであります。大きな成功のためには、初期の失敗をよく分析し、対策を練り続けることが必要であると再認識しました。

本書で感じたこと

バブルを例にあげていますが、問題は起こさないようにしても起こってしまうものです。起こる前提で適切な展開をすることを考えることも大事なことだと思います。そのためにも、過去のデータをもとに、状況を適切に把握し、仮説検証をもって、日々検討していくことが大事であると感じました。


 

戦後経済史は嘘ばかり (PHP新書)
作者:髙橋 洋一
出版社:PHP研究所
発売日:2016/1/16
経済、歴史

プロローグ──経済の歩みを正しく知らねば、未来は見通せない
第1章 「奇跡の成長」の出発点に見るウソの数々
第2章 高度経済成長はなぜ実現したのか?
第3章 奇跡の終焉と「狂乱物価」の正体
第4章 プラザ合意は、日本を貶める罠だったのか?
第5章 「バブル経済」を引き起こした主犯は誰だ?
第6章 不純な「日銀法改正」と、痛恨の「失われた二十年」
終 章 TPPも雇用法制も、世間でいわれていることはウソだらけ


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